開拓使による欧米農業技術の導入その歴史的場面を克明に描く異彩のドキュメンタリー。それまで我が国においては経験したことのない未開の北方寒冷地における農業技術の成立を目指して開拓使(明治政府)が試みた洋式農業導入の実態を、膨大な開拓使文書を丹念に調査することによって明らかにした労作である。特に、農業現術生制度と試験場(官園、育種場)に関する研究は学術的にも貴重である。北海道開拓史、北海道農業発達史は言うまでもなく、欧米技術文化の移植による我が国の近代化の過程を知る上からも極めて興味深い著書と言えよう。 彼ら(現術生徒)に課せられた仕事は、「西洋の農業技術を外国人教師から直接学びとり、それを北海道の開拓の現地に実現せよ、のために自ら模範を示して教えを導け」という厳しいものであった。理論と実践を一つのものとして身につけ、その実行力が求められたのである。そんなところから「現術」の言葉が充てられた。〔中略〕 土を耕すのにどんな農具を使っていたか、何の種を蒔いていたか、ビールの味はどうだったか、バターやチーズはいつどこで造くられたか、チューリップやダリアはいつから咲きはじめたか、初なりリンゴの色や品種名などなど、現在につながる多くのもののルーツがみえてくる。興味のあるルーツを根気よく探しながら、近代化に向かって出発する北海道の様子をじっくりと眺めてほしい。
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著者/富士田金輔
A5判 /306頁
定価: 3,800円+税(税込 4,180円)
ISBN978-4-8328-0605-4 |
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